- 急に涙が出る
- 理由もなく悲しくなる
- 赤ちゃんはかわいいのに苦しい
そんな経験はありませんか?
助産師として働いていると、退院前後のママから
「自分でもよく分からないけど涙が出ます」
という相談を受けることがあります。
実は産後に涙が止まらなくなることは珍しいことではありません。
この記事では原因や対処法、受診の目安について解説します。
産後に涙が止まらなくなるのは珍しくない
夜勤中、ママの部屋の電気がついていると、様子を見に行くことがあります。
それは、本当に多くのママが夜間にこっそり泣いているからです。
涙が出る理由はほとんどのママが分からないといいます。
よくわからないけど泣けてくる、それが産後のママの状態なのです。
産後に気持ちが不安定になるママは多い
妊娠中から産後にかけて、女性の体ではホルモンが急激に変化します。そして、心だけでなく体も大きく変化します。
その変化についていくだけでも大変なのに、ママたちは子育てという大きな責任を担うことになります。
ある夜、入院中のAさんのご主人から「妻が泣いているので部屋に行ってほしい」と連絡がありました。
部屋へ行くと、Aさんは赤ちゃんを抱きながら静かに涙を流していました。
理由を聞くと、
「退院が近づいてきて急に不安になった」
と話してくれました。
助産師から見ると、Aさんは育児も上手で大きな問題はありませんでした。しかし本人は、
「家に帰ってからちゃんと育てられるのかな」
という不安でいっぱいだったのです。
実はこのような気持ちは珍しいことではありません。
退院前になると、多くのママが漠然とした不安を口にします。
「急に泣けてきた」
「理由は分からないけど不安」
「退院するのが怖い」
そんな声を聞くことも少なくありません。
そのくらい、産後は気持ちが揺れ動きやすい時期なのです。
特に産後数日から2週間頃まではホルモンの変化も大きく、涙もろくなったり不安になったりするママは少なくありません。
多くのママが経験することであり、決して珍しいことではありません。
涙が出るからといって母親失格ではない
これもよくあることですが、泣いているママに「大丈夫?」と声をかけるとみんな「すみません」と謝るのです。産後に涙がでるのは悪いことではありません。
でもきっとママたちは頑張らないといけないと思い込んでしまっているのです。
赤ちゃんを育てるということを真剣に受け止め、頑張ろうとするママは本当に素晴らしいです。でも、そんな真面目で頑張り屋さんなママも疲れるときがあります。
そして、その変化は自分ではなかなか気づきにくいことも多いです。
産後の涙は、心や体が疲れているサインの一つかもしれません。そのため、産後に涙が出たときは「頑張りすぎてるから休まなきゃ」と考えるようにしてもらいたいです。
産後に涙が止まらなくなる主な原因
マタニティブルーズによる一時的な気分の落ち込み
産後数日から2週間頃にかけて、理由もなく涙が出たり、不安になったりすることがあります。
これは「マタニティブルーズ」と呼ばれ、多くのママが経験するといわれています。
主な原因はホルモンバランスの急激な変化や睡眠不足、育児への不安などです。
多くの場合は一時的なもので、十分な休息や周囲のサポートによって自然に落ち着いていきます。
ホルモンバランスの変化
出産後のママの体では、妊娠中に増えていた女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)が急激に減少します。
この変化は数日で起こるため、体だけでなく心にも大きな影響を与えることがあります。
月経前にイライラしたり悲しくなったりする方もいると思いますが、産後はそれ以上に大きなホルモンの変化が起こっています。
そのため、理由もなく涙が出たり、不安になったり、気持ちが不安定になったりすることがあるのです。
睡眠不足や疲労
ホルモンバランスが崩れたとき、私たちは休憩したり美味しいものを食べたりしてリラックスする時間を作ります。しかし、産後のママにはなかなかその時間が作れません。
常に寝不足、そして慣れない育児を必死に覚えていかなければいけません。赤ちゃんは待ってくれないので自分のペースでできない育児はママに大きな疲労を感じさせるかもしれません。
そんな中でもママは頑張って育児をしようとすると、心や体の疲れが積み重なり、涙という形で現れることもあります。
育児への不安やプレッシャー
よく初産婦さんは初めてだからサポートしようという声を周囲から聞きます。しかし、経産婦さんも複数の子どもを育てるのは初めてです。
また、赤ちゃんにはそれぞれ個性があります。
そのため、何人目の出産であっても育児への不安を感じることは自然なことです。
完璧にやろうとせず、分からないことは周囲に相談しながら育児を進めていきましょう。
環境の変化
出産後は生活環境も大きく変化します。
入院中は慣れない環境で過ごし、授乳や育児指導などで忙しい毎日を送ります。
退院後も、里帰りやワンオペ育児など、それまでとは異なる生活が始まります。
こうした環境の変化は知らず知らずのうちにストレスとなり、涙として現れることがあります。
産後に涙が出るときの対処法
まずはしっかり休む
まずは十分な休息をとることが大切です。
私は入院中にママが泣いているとき、「赤ちゃんは見ているので少し寝てくださいね」と声をかけることがあります。
ママは赤ちゃんを優先するあまり、自分のことを後回しにしてしまいがちです。
だからこそ、一度誰かに赤ちゃんを預けて、自分のための休息時間を作ってみてください。
気持ちを誰かに話す
育児に不安はつきものです。今の不安な気持ちを誰かに伝えましょう。
人に話すと意外とスッキリするなんてこともあります。私は退院指導のとき、「人を捕まえてでも話すくらいの気持ちでいてくださいね」とお伝えしています。
それは、妊娠中は周囲は妊婦を見てくれます。しかし、産後の周囲の視線はママではなくどうしても赤ちゃんに注がれることになります。
そのため、どうしてもママに意識が向きにくいことがあるのです。そのため、気付いてくれるのを待つのではなく、聞いてほしいと伝えることが大切になります。
周囲に話しにくい場合は、助産師や保健師など専門家に相談するのも一つの方法です。
泣くことを我慢しない
泣くときは思いっきり泣いてください。泣いちゃダメなんて思う必要はありません。
自分が感じている悲しいという気持ち、不安であるという気持ちを隠すこともしなくて大丈夫です。
我慢せずに涙を流すことで、少し気持ちが楽になることもあります。
そうすることで気持ちが落ち着くこともあります。
完璧な母親を目指さない
妊娠期にママたちはどういうママになりたいかイメージします。そして、その理想が高い人ほど完璧を目指し、失敗したくないと思ってしまいます。
でも、育児は思い通りにいかないことの連続です。
そのため、完璧な育児なんていうものはないのです。
私は、赤ちゃんにとってママの笑顔はとても大切なものだと思っています。完璧を目指すよりも、周囲を頼りながら続けられる育児を目指していきましょう。
一人の時間を少し作る
ママたちはどうしても優先順位の1番を赤ちゃんにしなくてはいけない時間が多くなります。そのため、意図的に自分を優先順位の1番にできる時間を作りましょう。
パパや家族に赤ちゃんを預けて散歩に出たり、好きな飲み物を飲みながらゆっくり過ごしたりするだけでも気分転換になります。
いつも赤ちゃん優先じゃなくてもいいのです。
自分を優先できる時間を作り、自分を大切にしてあげてください。
こんなときは医療機関へ相談しよう
気分の落ち込みが長く続く
マタニティブルーズによる気持ちの落ち込みは、産後2週間程度で落ち着いていくことが多いといわれています。
しかし、2週間以上たっても気分の落ち込みが続く場合や、日常生活に支障が出ている場合は、産後うつの可能性もあります。
そんなときは、一人で抱え込まず助産師や医師に相談してください。
また、症状が強い場合は2週間を待たずに相談しても大丈夫です。
育児がつらすぎると感じる
育児に疲れてしまうことは誰にでもあります。
しかし、
・眠れない
・食欲がない
・何もする気が起きない
という状態が続く場合は注意が必要です。
心や体が限界に近づいているサインかもしれません。
一人で抱え込まず、助産師や医師に相談してみてください。
自分や赤ちゃんを傷つけたくなる
もし、
「消えてしまいたい」
「自分を傷つけたい」
「赤ちゃんに危害を加えてしまいそう」
と感じることがあれば、すぐに医療機関へ相談してください。
これは気合いや根性で乗り越えるものではありません。
心が限界に近づいているサインであり、専門家のサポートが必要な状態です。
パートナーや家族が気づいた場合も、「頑張って」と励ますのではなく、一緒に医療機関へ相談するようにしてください。
また、妊娠中から「ママの様子が周りから見ていてつらそうだったら病院に相談する」ということを決めごととしてパパや家族と相談しておきましょう。
産後の涙は「助けて」のサインかもしれない
産後の涙は、多くのママが経験することです。その多くは明確な理由のない涙で、漠然とした不安や疲れからくる心のSOSだったりします。
もし勝手に涙があふれてくるときは、それ以上無理をせず、「私、頑張りすぎているな」と自分に休息を与えてあげてください。
育児は1人でするものではありません。パパや家族と協力しながら進めていきましょう。そして、困ったときは助産師や医師などの専門家を頼ることも大切です。
産後に涙が出ることは、決して母親失格だからではありません。むしろ赤ちゃんのことを一生懸命考え、頑張っている証拠でもあります。
この記事を読んでいるママの不安が少しでも軽くなり、「一人じゃないんだ」と感じてもらえたらうれしいです。
<参考文献>

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