「母乳が出ないかもしれない」
「胸が張らないから母乳が出ていないのでは?」
そんな不安を感じているママも多いのではないでしょうか。
助産師として働いていると、多くのママから母乳についての相談を受けます。その中でも特に多いのが、
「いつから母乳は出るようになりますか?」
「胸が張らないと母乳は出ていないのでしょうか?」
という質問です。
実際には、出産直後から十分な量の母乳が出る方は多くありません。
母乳は赤ちゃんに吸ってもらうことで少しずつ分泌が促されていくものです。そのため、最初からたくさん出なくても心配しすぎる必要はありません。
この記事では、母乳が出ないと感じる原因や対処法、助産師や医療機関に相談した方がよいサインについて解説していきます。
そして、助産師として、そんなママたちに伝えたいことがあります。
母乳は赤ちゃんに吸ってもらうことで少しずつ分泌されていくものです。
そのため、出産直後からたくさん出なくても大丈夫です。
焦らず、赤ちゃんとの授乳時間を重ねながら、一緒に母乳育児を進めていきましょう。
母乳が出ないと悩むママは少なくない
母乳が出ないという悩みは、多くのママが経験するものです。
それは、授乳開始前のタイミングから退院直前まで様々な状況で相談されます。
それだけママたちの中で母乳は当たり前に出るものだというイメージが強いのだと思います。
しかし、私たち助産師の中では母乳がすぐ出ないというのは普通のことだと知っています。
そのため、まずは母乳が最初から出ないことは普通であり、心配しなくても大丈夫であることを知ってほしいです。
母乳が出ないと感じやすいタイミング
母乳が出ていないと感じるのは、夜間であることが少なくありません。
赤ちゃんと一緒に過ごしていると日中はよく寝ているのに夜中に起きてくることが多いことに気づくと思います。
お昼間に助産師から「母乳だけでやってみようか」なんて言われて母乳だけで授乳をしてみたけど夜中赤ちゃんが全然寝てくれなくて、というのは本当によくあることなんです。
赤ちゃんが泣く=母乳が足りていないわけではありません。
そのため、ママは不安に感じてしまうかもしれません。
しかし、赤ちゃんは抱っこしてほしいときや眠いとき、不快感があるときにも泣きます。
母乳以外の理由で泣いている可能性もあると考えてみることが大切です。
「出ていない」と「足りていない」は違うこともある
先ほどお話したように赤ちゃんはママを求めて泣きます。母乳をあげた直後に赤ちゃんが泣くと「出てないのかな」と不安になることもあると思います。
しかし、赤ちゃんが泣く時には「もうちょっと欲しい」場合や「抱っこしてほしい」時、または「お腹がいっぱいすぎて苦しい」なんて場合もあります。
赤ちゃんが泣いたときは、まず母乳をあげてみてもよいでしょう。
しかし、意外と吸ってくれないこともあります。
その場合は「抱っこしてほしい」「眠たい」など、母乳以外の理由で泣いている可能性も考えられます。
母乳が出ない主な原因
母乳が出ない原因はひとつではありません。産後の経過や赤ちゃんの様子、お母さんの体調など、さまざまな要因が関係しています。ここでは、多くの方に当てはまりやすい原因について解説します。
産後すぐは母乳量が安定しないため
出産直後から母乳が十分に出る方はほとんどいません。
そのため、私の勤めている病院では産後3日目に母乳量の測定を実施しています。その理由はそれまではほとんど母乳が量にならないためです。
そして、母乳量が安定しない産後すぐは、授乳前後で測定しても、目に見えるほどの哺乳量にならないこともあります。
しかし、助産師は母乳分泌が十分でない最初のタイミングに赤ちゃんに母乳をあげる行為=乳頭刺激が分泌を促進することを知っています。
そのため、最初から母乳分泌は安定しないが、母乳をあげることが大切になるのです。
授乳回数が少ないため
先ほど乳頭刺激が大切だと話しましたが、母乳をあげる回数が多いほど分泌が促進されます。
私たち助産師はよく頻回授乳という言葉を口にしますが、それは1日10回~12回母乳をあげることを意味します。3時間おきの授乳では1日8回母乳をあげます。
つまり、赤ちゃんが欲しがるタイミングで授乳することで分泌を促すことができるのです。
赤ちゃんがうまく吸えていないため
また乳頭刺激の話をしますが、母乳分泌を促す刺激は乳首だけでなく、乳輪部までしっかり含んでもらうことで伝わりやすくなります。
助産師が「もっと深くくわえさせましょう」というと思いますが、乳頭が傷つくからという意味と、深く吸啜できていないと十分に乳頭刺激が伝わらず母乳分泌につながらないことがあるためです。
そのため、回数は多くあげているのに分泌が増えないという方はくわえさせ方を見直してみてください。
疲労やストレスの影響
出産、そしてそのまま育児に突入するママたちはほとんどが寝不足でストレスを感じていることと思います。
出産直後のママに「疲れないようにしましょう」「ストレスをためないようにしましょう」と言うのは簡単ではありません。
ただ、頑張りすぎて疲れてしまっている方や、母乳がでないことを必要以上に悩んでしまっている方に伝えたいのが、しっかり休むことも必要だということです。
一度家族や私たちに赤ちゃんを預け、次の授乳までぐっすり休みましょう。そして、母乳がでないことや困っていることを私たちに相談してください。
入院中であればナースコールひとつで私たちが部屋に行きます。退院後であれば、お昼間電話相談や育児訪問をやっている助産院などもあるでしょうからそこに相談ください。
頑張りすぎているママは、一度しっかり休んでエネルギーを回復することが母乳分泌を促すことにつながることを覚えておいてください。
睡眠不足や体調
産後は授乳や育児によって睡眠不足になりやすい時期です。
私自身、過去に母児同室の病院と母児異室の病院の両方で勤務した経験があります。
個人的な印象ではありますが、しっかり休息が取れているお母さんの方が、育児にも前向きに取り組めているように感じました。
もちろん母乳分泌には授乳回数も大切ですが、お母さん自身の体調を整えることも忘れてはいけません。
眠れるときは休み、周囲のサポートも活用しながら無理のない育児を心がけましょう。
母乳が出ないときの対処法
赤ちゃんが欲しがるたびに授乳する
母乳分泌を促すために、まずは授乳回数を増やしてみましょう。赤ちゃんが欲しがったらあげるという授乳方法にすると赤ちゃんによって個人差はありますが、1日10回以上になることも珍しくありません。
そうして、母乳をあげる回数が増え、乳頭刺激が多くなると母乳分泌は促されていきます。赤ちゃんがあまり起きてくれないという方は搾乳をするように自身の手で乳頭刺激をしてみましょう。
ただ、自身でやる場合は清潔な手で行うこと、力を入れすぎて乳房や乳頭を傷つけないようにしましょう。
授乳姿勢やくわえ方を見直す
前かがみの姿勢や首に力が入りすぎると、お母さん自身が疲れやすくなります。
また、そんな姿勢だと赤ちゃんの姿勢も無理な体勢となり授乳に集中できなくなります。クッションなどを使って調整し、ママと赤ちゃんがどこにも力が入っていない姿勢を目指しましょう。
そして、赤ちゃんが乳首だけでなく乳輪まで深くくわえられるよう意識してみましょう。
水分と食事をしっかり摂る
母乳を分泌させるにはエネルギーが必要になります。のどが渇く前からこまめに水分補給を心がけましょう。
産後は悪露(下からの出血)があり、汗もかきやすいため多くの水分が必要になります。お茶や水を多めに摂取しましょう。そして、おにぎりなど炭水化物をしっかり食べるようにしましょう。
できるだけバランスの取れた食事を意識していきましょう。
休息を確保する
3時間ごとの授乳をしているママたちはなかなか休息をとりづらいのが実際です。赤ちゃんが寝ている間は家事を後回しにして、一緒に休む時間を作りましょう。
そして、誰か支えてくれる方がいる場合は、その人に赤ちゃんを預けてしっかり休息を取るようにしましょう。
ミルクを上手に活用する
時間によっては何回母乳をあげても赤ちゃんが寝てくれないといった時間もあると思います。そんな時は一度ミルクをあげてみましょう。ミルクを使うことは母乳育児を諦めることではありません。
連続で母乳をあげ続けることでママの疲労につながりますし、赤ちゃんも疲れてしまい怒って吸ってくれなくなることもあります。
一度リセットすることを目的にミルクをあげ、お互い休息をとり、また次の時間から母乳をあげていくといった感じにしていくと無理せず続けることができます。
こんなときは助産師や医療機関に相談しよう
赤ちゃんの体重増加が不十分な場合
体重増加が不十分である場合は、今はミルクの力が必要であることもあります。
母乳を飲むのにも赤ちゃんは体力が必要です。母乳を頑張りたいママの気持ちもよく分かります。
しかし、体重増加が不十分な場合は、まず赤ちゃんがしっかり成長できるようにサポートすることが大切です。
体重増加が不十分な場合は母乳量とミルク量のバランスの取り方を私たち助産師や医師に相談ください。
おしっこやうんちの回数が少ない場合
おしっこやうんちの回数には個人差がありますが、普段よりも明らかに少ない場合は注意が必要です。
おしっこの回数が減ったり、うんちが極端に少なくなったりした場合は、十分な量の母乳やミルクが飲めていない可能性があります。
その場合は、ミルクを追加した方がよいケースもありますので、助産師や小児科医に相談してみましょう。
また、おしっこやうんちが24時間以上出ていない場合は、授乳量の不足以外の原因が隠れていることもあります。早めに小児科へ相談することをおすすめします。
乳房トラブルがある場合
乳房が張っている、赤くなっている、強い痛みがある、38度以上の発熱があるなどといった症状がある場合、乳腺炎になっていることやその前症状の可能性があります。
自分だけで抱え込まず、気軽に私たちに相談ください。ただ、発熱している場合、医師に抗生剤などを処方してもらわないといけない場合もあるため、医師のいる医療機関に受診をおすすめします。
母乳育児は頑張りすぎなくて大丈夫
母乳育児を頑張りたいと思っているその気持ちは、とても素晴らしいものです。しかし、頑張りたい気持ちが強いからこそ、「母乳が出ない」「足りていないかもしれない」と悩んでしまう方も少なくありません。
この記事でお伝えしたように、母乳が出ない原因はさまざまです。
産後すぐは母乳量が安定しないこともありますし、授乳回数やくわえ方、疲労や睡眠不足などが影響していることもあります。
そのため、母乳が出ないことで自分を責める必要はありません。
母乳もミルクも、どちらも赤ちゃんを育てる大切な方法です。赤ちゃんにとって何より大切なのは、ママが心身ともに健康でいることではないでしょうか。
しんどいときや頑張りすぎていると感じたときは、ミルクや周囲のサポートを上手に活用してください。そして、困ったときは一人で抱え込まず、助産師や医師、家族に相談しましょう。
この記事が、母乳について悩んでいるママの不安を少しでも軽くし、安心して育児を続けるきっかけになれば幸いです。
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